抄録
我々は、植物病原菌Alternaria alternataの培養上清をタバコ培養細胞BY-2に作用させることで、キチナーゼおよびグルカナーゼが誘導されることを見出している。そこで本研究では、A. alternata培養上清中に含まれるエリシター活性成分の同定を目的として実験を行った。
A. alternata菌体培養液をオートクレーブ処理後、菌体を除去した。培養液の99%メタノール不溶画分を、除蛋白、アルカリ抽出、メタノールによる分別沈殿を行い、さらにゲルろ過によってエリシターの精製を行った。エリシター活性は、BY-2キチナーゼの誘導活性を指標とした。
分子量4,000以上の画分に得られたエリシター活性成分は、糖含有量が95%以上であり、200μg/mlで顕著なキチナーゼの誘導活性を示した。また、活性成分の構成単糖を決定するために、加水分解後TLCによる解析、および加水分解物のアルジトールアセテート誘導体を調製し、GC-MSによる解析を行った。その結果、活性成分はマンノース、グルコース、ガラクトースを含んでおり、A. alternata由来エリシターはこれらを構成単糖とするヘテログリカンであることが推定された。現在、本エリシターの詳細な構造解析を行っている。