抄録
我々は、ムラサキ培養細胞に見られるshikonin生合成能の変異を分子レベルで明らかにすることを目的として、shikonin生産株(Mp株)と非生産株(MpW株)のフェノール性代謝産物組成及びshikonin生合成に関与する酵素遺伝子の発現レベルを比較した。今回はさらに、FDD法を用いてMp株で強く発現している遺伝子として単離したLEPS-2についての解析結果も合わせて報告する。
Mp株とMpW株のフェノール性代謝産物を逆相HPLCで分離し、NMR及びMSを測定することにより同定した。Mp株の可溶性methanol画分では、shikonin誘導体をはじめ、rosmarinic acidやlithospermic acid、rabdosiin などのphenylpropanoid化合物が検出された。一方、MpW株では、lithospermic acid以外はこれらの化合物の含量は著しく低かった。しかしながら、shikonin生合成酵素遺伝子の発現レベルには株間で有意な差はなかった。
次に、FDD法によって単離したLEPS-2の遺伝子発現レベルとshikonin生産との関連を解析したところ、両者には強い正の相関性があった。さらに、LEPS-2タンパク質の細胞内局在性を調べた結果、LEPS-2は細胞壁のアポプラスト画分に存在していた。培養細胞でのshikoninの最終的な蓄積部位も細胞壁であり、本タンパク質はshikoninの細胞壁での放出、輸送、もしくは蓄積に関与しているものと推定している。