抄録
植物は低リン条件下で酸性フォスファターゼ(APase)活性が高まり、リンの転流および吸収のために体内または根圏で有機態リンを分解する。本研究は、APaseの低リン条件下での機能をより詳細に解析することを目的として実施した。
本研究では、低リン耐性が強く根から多量のAPaseを分泌することが知られているルーピン(Lupinus albus L.)を供試した。+P区(2 ppm), -P区(0 ppm)を設けてルーピンを水耕栽培し、経時的に器官別に採取した。各試料から可溶性タンパク質を抽出し、等電点電気泳動法によりAPaseアイソフォームのプロファイリングを行った。根や本葉では-P区で特定のアイソフォームのAPase活性だけが上昇するのではなく、複数のアイソフォームの比活性が上昇した。子葉と茎・葉柄においては、-P処理はAPase活性に大きく影響しなかった。根分泌液からは、根で最も高い活性を示したpI 4.7のアイソフォームだけが-P区で検出された。全RNAを抽出し、これまでに単離したルーピン由来の3種類のAPaseのmRNA量を調査したところ、細胞壁局在型APaseとフィチン酸特異的APaseの遺伝子は、リン処理による変動は小さく、すべての器官において発現が認められた。一方、分泌性APase遺伝子の発現は-P区の根のみで検出され、他のAPaseの遺伝子発現の変化とは異なっていた。