日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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成長相転換の制御とPEBP/RKIP族蛋白質
*荒木 崇
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p. S39

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抄録
PEBP/RKIP族の蛋白質は真核生物に広く存在する蛋白質である。哺乳動物から、まず、フォスファチジルエタノールアミン結合蛋白質(PEBP)として報告され、その後、海馬の神経ペプチドHCNPの前駆体蛋白質、Raf-1キナーゼ阻害蛋白質(RKIP)、トロンビン(セリンプロテアーゼ)の阻害蛋白質がPEBPと同一の蛋白質であることが明らかになった。高等植物では、成長相転換に関わると考えられるキンギョソウのCEN、シロイヌナズナのTFL1とFT、トマトのSPが早くから知られていた。これまでに、哺乳動物2種のPEBPとCENがよく似た立体構造をもつことが明らかになっている。このことは、この族の蛋白質が共通した生化学的機能をもつことを示唆するが、その機能の実体には不明の部分が多い。ことに植物の蛋白質については生化学的な機能に関する報告がない。PEBP/RKIP族の蛋白質は、いずれの種においても複数の分子種からなる小さなファミリーを形成する。シロイヌナズナには、既出のTFL1、FTのほかに、TSF(FTと高い相同性をもつ)、ATC(TFL1と高い相同性をもつ)、BFT、MFTを含む6種が存在する。このうち、TFL1、FT、TSF、ATCについては、機能喪失変異株・過剰発現株が得られており、同族蛋白質・遺伝子間の役割分化に関する興味深い事例を提供している。この点を中心に話題提供をおこないたい。
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© 2003 日本植物生理学会
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