日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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トランスジェニックタバコを用いたRIPおよびRALyaseの生理学的意義の検討
*井谷 麻衣伊藤 志おり澤崎 達也遠藤 弥重太
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p. 143

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抄録
 リボソ-ムを不活性化するRibosome Inactivating Protein (RIP)は、植物に普遍的に存在すると考えられ、抗ウイルスタンパク質としても知られている。我々はさらにRIP依存的にrRNAを切断する新規酵素、RNA Apurinic site specific Lyase (RALyase)を小麦胚芽中から発見し、精製および遺伝子のクローニングに成功している。我々はこれら遺伝子が細胞の自殺機構に関わっているのではないかとの仮説のもと、老化機構との関連性に注目した研究から、RIPの誘導とそれに伴うリボソームの不活性化が老化過程に深く関与していると示唆する結果を得ている。本研究では、さらにこれら遺伝子の生理学的役割を解明することを目的とし、Dexamethasone (DEX)を用いて人為的にRIP、RALyaseを発現誘導できる形質転換タバコを用い、老化およびウイルスに対する過敏感反応について解析した。
 RIPを組み込んだ系統ではDEXによるRIP誘導3日目から顕著に葉が黄化し、成長が阻害された。RALyaseを組み込んだ系統ではDEXによるRALyase誘導30日目から徐々に葉が黄化し始めた。さらに、RIP、RALyaseを誘導したそれぞれの系統にタバコモザイクウイルスを感染させたところ、野生型と比べ、プラークが小さく、数も少なかった。以上より、RIP、RALyaseは老化と抗ウイルスに関するユニークな遺伝子であることが示唆された。現在、これら遺伝子を同時に発現誘導できる形質転換タバコを作出し解析を行っている。
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© 2004 日本植物生理学会
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