抄録
GLP-1はインスリンの分泌を誘導する活性を持つ30アミノ酸からなるホルモンペプチドであり、糖尿病の治療に効果があると期待されている。我々は改変型GLP-1(mGLP-1)を胚乳特異的で高発現を示すGluB-1プロモーターの制御下で発現する形質転換イネを作製した。しかし得られた形質転換体からはmGLP-1の蓄積は認められず、得られた約半数の形質転換体でグルテリンタンパク質の減少がみられた。2次元電気泳動やノーザン解析の結果、グルテリンタンパク質の減少はグルテリンBファミリーのmRNAレベルでの発現抑制のためであることが分かった。さらに発現抑制が起こっている系統で導入遺伝子のsmall RNAが検出され、RNAiが起こっていることが示唆された。
そこでmGLP-1とGFPの融合タンパク質を発現する形質転換イネと5連結したmGLP-1を発現する形質転換イネを作製した。mGLP-1は融合タンパク質ではその活性が失われる可能性があるので、GFPとの間に自動切断配列である2A polyproteinの配列を導入した。それぞれの形質転換体を解析したところ、それぞれのmRNAが検出され、RNAiが起こっていないことが示された。しかし2A配列により切断された(切断効率は約90%)後のmGLP-1ペプチドの単体は検出されなかった。一方、mGLP-1を5連結した系統では約18.6 ug / 1粒のmGLP-1ペプチドの蓄積が認められた。