日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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タンパクキナーゼHT1はシロイヌナズナにおけるCO2応答に関与する
*橋本 美海祢宜 淳太郎射場 厚
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p. 059

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抄録
CO2は濃度依存的に気孔の開閉を誘導する環境因子であり、低CO2条件下では気孔は開口し、蒸散量が上昇し、葉面温度が低下する。このような植物のCO2感知のメカニズムを調べるために、現在、CO2濃度依存的な葉温変化に異常をきたすシロイヌナズナ突然変異体のスクリーニングを行っている。ht1(high leaf temperature mutant 1) は、低CO2条件下で高温を示す変異株として単離された。ht1においては、CO2濃度変化に伴う気孔の応答性が低下していた。原因遺伝子をマッピングにより同定したところ、キナーゼと相同性が高い遺伝子であることが明らかとなった。HT1 タンパク質を大腸菌によって発現させ、その活性を調べたところ、リン酸化能を持つことが確かめられた。また、ht1の1アリルであるht1-1においては、キナーゼ活性において重要なVIbドメインに1アミノ酸置換が生じていたが、このHT1-1型キナーゼの活性は著しく低下していた。一般にATP結合部位を人為的に改変したキナ−ゼはその活性を失うことが知られているが、このような改変HT1遺伝子を過剰発現させた形質転換植物は、ht1と同様、低CO2条件下でも高い葉面温度を示し、CO2応答性も低下していた。このことはHT1キナーゼの活性が植物におけるCO2応答と密接に関わっていることを示唆している。
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© 2005 日本植物生理学会
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