抄録
近年、常温単細胞性シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803を用いて、走光性や細胞運動に関わる光受容体やシグナル伝達、線毛形成の遺伝子が多数同定されている。一方、好熱性のThermosynechococcus elongatus BP-1は運動性や走光性を示すことが知られており、また全ゲノム配列も決定されている。本発表では、T. elongatus BP-1の近縁種であるT. vulcanus RKNを用い、運動性や走光性に関わる遺伝子の機能解析の結果を報告する。T. vulcanus RKNは寒天平板上でやや広がったコロニーを形成するが、通常の培養条件ではわずかな運動性しか示さない。我々は糖転移酵素の研究過程で、その遺伝子破壊株が顕著な運動性を示し、白色光に対して、おもに負の走光性を示すことを見出した。また、多糖分解酵素を塗布した寒天平板上では運動性はさらに向上した。この運動性株を親株として、走光性の光受容体pixJや、線毛形成に関わるpilC、pilT等の遺伝子を破壊したので、寒天平板上の走光性、運動性への影響を報告する。