抄録
シアノバクテリアは線毛を用いて走光性などの細胞運動を示す。われわれは、これまでに走光性の光受容体や調節因子、線毛形成のアセンブリ因子や調節因子などの遺伝子を、常温性シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803を用いて同定してきた。また、走光性の光受容体SyPixJ1を単離して、430nmと530nmの可逆的な光変換を示す新規光受容体(“シアノバクテリオクロム”と命名)ことを報告した(PCP 2004)。しかし、このSyPixJ1標品にはクロロフィルなどの混入があり、十分な解析ができていない。一方、好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanusの糖転移酵素破壊株が顕著な走光性を示すこと、SypixJ1のT. elongatusのホモログTepixJが走光性の光受容体であることをわれわれは見いだした。本発表では、このTePixJの色素結合ドメインの性質を報告する。TePixJ_GAFをSynechocystisでHisタグ融合として発現、精製した。得られた標品は、SyPixJ1全長と同じ青・緑可逆変換を示したが、クロロフィルやフィコシアニン、カロテノイドなどを全く含んでいなかった。SyPixJ1とは異なり、TePixJ_GAF標品は青色吸収型だけでなく緑色吸収型も暗反転を示さなかった。これは、新規光受容体シアノバクテリオクロムが進化的に保存された普遍的な光受容体であることを示している。