日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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糖が葉の厚さに与える影響
*矢野 覚士塚谷 裕一
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p. 419

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抄録
植物は光環境に応じた葉を形成する事が知られている。明所型のものは陽葉、暗所型のものは陰葉と呼ばれており、光合成特性、生理学的特性、さらには形態学的に両者に差がある事が数多く報告されている。その一方で、陽・陰葉の発生学的な解析はほとんど行われて来なかった。しかし近年になって、シロイヌナズナ、シロザ、タバコで、新しく作られる葉の発生が、既に展開している葉の光環境に依存して調節されている事が明らかになった(Lake et al. 2001、Yano and Terashima 2001、Thomas et al. 2004)。これらの事は成熟葉から葉原基への long-distance signaling が存在する事を示している。我々は、このシグナルが光合成産物の糖類であるという仮説を立て検証を行っている。60 μmol m-2 s-1 の光強度下で、糖濃度を変えた培地(0.5、1、1.5、2、3% sucrose)で栽培したシロイヌナズナを材料とした。ロックウールなどで育てた場合、この光強度下では柵状組織を構成する細胞層数は約1層で葉の肥厚は起こらない。しかしながら、培地の糖濃度が2%を超えると細胞層数の増加ならびに葉の肥厚化が観察できた。これらの結果は、葉の発生運命を左右するシグナルが糖であるという仮説を支持するものである。また、phyB 変異体でも野生形と同様に糖濃度に依存した葉の肥厚が確認できた。発表ではこれらの結果に加え、その他の変異体(光受容体、糖応答変異体)の解析結果を報告する。
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© 2005 日本植物生理学会
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