抄録
モモ果実由来の2種(幼果と成熟果)のcDNAライブラリーについて、解析を行っている。これまでに、約1,500の独立なクローンについて、一部の塩基配列を得た。FastAまたはFastXによるホモロジーサーチの結果、ORFをすべて含むと推定されたクローン271種について、翻訳開始点の前後の塩基配列(-20....+13)を抜き出し、特徴を検討したところ、次のような傾向が見いだされた。1) 5'UTRには、同じ塩基が 3つ以上連続する、あるいは6塩基以上で構成される繰り返し配列がよく見られるのに対し、CDSでは比較的まれである。2) 特に、-4から-1にかけてAの出現頻度が高く、開始コドン直近の2塩基がAAの割合は25%であった。3) 開始コドン直後の塩基はGが72%を占め、2塩基めはCの頻度が55%で高く、この結果GCの出現頻度が40%となり、2番目のアミノ酸は、アラニンが多くなる。4) 開始コドン直前の20塩基に終始コドンが存在するものは、147クローン(全体の54%)で、CDSと同じ読み枠の場合が49(18%), 違う読み枠では109(40%)であった。以上より、mRNAの開始コドン前後では、塩基配列においても異なった特徴が見いだされ、翻訳開始位置の特定、翻訳効率の決定に関与していると推定された。