抄録
緑藻クラミドモナスはCO2が欠乏するとCO2濃縮機構を誘導し、細胞内に能動的にCO2を輸送する。この機構はCO2の濃度変化の感知とシグナル伝達を介した、CO2輸送体を含む遺伝子群の発現誘導によるとされている。我々は遺伝子発現プロファイルからCO2欠乏誘導性遺伝子を同定し、その機能解析を進めている。
細胞を5%のCO2過剰条件から0.04%のCO2欠乏条件に移し6時間までの発現プロファイルを取得し、277個のCO2欠乏誘導性遺伝子を見出した。この中に含まれるLciBは、ピレノイド構造を持つ緑藻にオルソログが見いだされ、48-kDaの親水性タンパク質をコードする。LciBの発現はCO2シグナル伝達のマスター因子CCM1に制御され1)、CO2輸送能を欠損した変異株を相補することから2)、LciBがCO2欠乏条件においてCO2輸送に積極的に関わると考えられるが、その機能は解析されていない。そこで我々はLciBタンパク質に対する抗体を作製し、低CO2条件においてピレノイド周囲に蓄積することを明らかにした。またLciBのRNAi株を作出したところ、CO2輸送活性が野生株に比べて70%程度低下していた。CO2欠乏条件におけるLciBの機能について議論したい。1) Miura et al., Plant Physiol., 2004 2) Wang and Spalding, PNAS, 2006