抄録
高等植物や緑藻の光化学系I(PSI)は、コア複合体にアンテナ複合体であるLHCIが結合した超分子複合体としてチラコイド膜に存在する。緑藻クラミドモナスのチラコイド膜をドデシルマルトシド(DM) で可溶化し、ショ糖密度勾配超遠心法で分離すると、サイズの異なるPSI複合体が得られた。500 kDaの標品(A2)には分子集合中間体でPsaKを欠く複合体が、700 kDaの標品(A3)には最も存在量の多い成熟型の複合体が存在することは既に報告した。本研究では、1000 kDa以上の巨大な複合体(A4)が少量であるが分離されることを新たに見出した。これら3種の複合体は高い濃度のDMで可溶化しても安定に分離されるので、可溶化の程度の差によって生じたのではなく、異なる構造のPSI複合体がチラコイド膜に存在することを反映していると考えられる。それぞれの複合体のタンパク組成の分析より、A4にはマイナーLHCIIが存在することが示された。A4のPSI複合体とマイナーLHCIIは塩の添加により解離するため、静電的相互作用により結合していると考えられる。さらに、種々の光合成変異株を用いたこの新規PSI複合体の解析結果と併せ、このA4画分のLHCIIはPSI複合体 のアンテナとして機能しているのか、ステート変化に伴うPSIとPSII間の励起エネルギー分配に関与しているのか、などについて議論する。