抄録
多くのよじ登り植物に見られる巻きひげは、接触刺激によって支持体に巻き付くことが知られている。巻き付き現象には、微小管が物理的な刺激の感知に重要な役割を持ち、また、内生オーキシンのインドール酢酸（IAA）が巻き付き運動に関与している可能性は示唆されているが、詳細は分かっていない。前回大会で、水耕栽培で育てたカボチャの巻きひげを用いて、IAAが巻きひげ切片に強い巻き付き現象を生じること、また、巻きひげ切片のスプリットテストからIAAが巻き付くとき外側にくる組織を伸長させることによって巻き付き運動を行うことを示した。また、巻き付き運動時に巻きひげのIAA量が増加するという報告があることから、巻きひげでは、IAAが輸送されてくるか、あるいは巻き付き時に新たに合成されている可能性がある。そこで、巻きひげでのIAAの極性輸送の方向を調べた。カボチャの巻きひげの先端、あるいは基部にIAAを投与すると、先端に投与した場合は巻き付き運動は生じなかったが、基部に投与した場合、支持体が無くても巻き付きを生じた。また、基部にIAAを投与し、IAAの極性移動阻害剤のN-(1-ナフチル)フタルアミド酸（NPA）をすぐ近くの先端側に投与しても、巻き付き運動を阻害しなかった。このことは、巻きひげについては、NPAに阻害されない基部側から先端へのIAAの極性輸送が存在する可能性を示している。
