抄録
葉は光合成を遂行する主要器官であるため、機能・形態の異なる葉身と葉柄間において、それぞれ異なる光形態形成が行われることが重要である。我々は、葉身・葉柄の光形態形成において、各器官に内在的な特異的因子と光受容体シグナルとの相互作用による制御の可能性を示してきた。そこで今回、葉柄特異的に強い成長阻害を示す rot3 と doc1/tir3 の解析を行ったので報告する。ROT3 (=CYP90C1) は brassinosteroid 合成酵素をコードすることが明らかになっている。rot3 は葉柄成長に phyB シグナルに依存した光応答が見られず、また胚軸や葉身成長への影響が少ない点において、強い矮性を示す既知のbrassinosteroids欠損型変異株と異なる。その一方で、doc1/tir3 は rot3 と良く似た表現型をしており、 rot3 doc1/tir3 二重変異体では両変異間での遺伝的相互作用が見られた。さらに doc1/tir3 ではauxin極性輸送に異常があるとされている。そこで、auxin によって発現が誘導される AUX/IAA と GH3a 遺伝子の発現パターンを解析した結果、 phytochrome シグナル依存的に葉柄での高い発現誘導が認められた。これらの結果は、 phyB シグナル下流において ROT3やDOC1を介したシグナルネットワークが葉柄成長を特異的に制御していることを示唆している。