抄録
紅芒ムギは,半乾燥地帯である中国黄土高原で栽培されている在来コムギ品種で,土中深く播種しても芽生えることができる.これまでに我々は,この深播き耐性は,紅芒ムギにおいて第一節間の伸長が通常のコムギ品種に比べ著しく大きいことに起因し,またその伸長は紅芒ムギの第一節間がジベレリン(GA)超感受性を有することにより発揮されることを明らかにしてきた.そこで本研究では,第一節間の伸長機構を解明するために,紅芒ムギを用いて,GA応答の場となる伸長部位の特定,および伸長特性を解析した.まず,第一節間の伸長部位を明らかにするため,播種後6日目の芽生えの第一節間に1cmおきに印をつけ,14日後に各印の間隔を計測した。その結果,基部1cmの部位の伸長量が他と比べ非常に大きく,GAによる有意な増大も認められた.また,第一節間基部,中部,頂部における表皮細胞長を経時的に測定したところ,GA処理により第一節間中央部で有意な伸長が認められたものの,頂部,基部では細胞長に有意差は認められなかった.そこで,第一節間基部での伸長に対する細胞分裂の寄与を,細胞分裂指数の計測により解析した.その結果,分裂指数はGA処理により有意な増加が認められた.これらのことから,紅芒ムギにおいて,GAは第一節間中部では細胞伸長,基部において細胞分裂を促進することにより,深播き耐性に必須な第一節間の伸長を調節すると考えられた.