抄録
ゲノムプロジェクトの進展に伴なう大量の遺伝子情報を元に、それぞれの遺伝子機能を同定し、それを利用するためには、DNAアレー解析等による遺伝子発現プロファイルの解析とともに、個別の遺伝子機能の同定が必要不可欠である。遺伝子機能の同定には、大腸菌や酵母のような異種発現系、あるいは植物体そのものにおいて、遺伝子を構成的あるいは誘導的に発現させ、遺伝子機能を解析する一方、植物個体における遺伝子発現を抑制し、遺伝子機能を推定することも極めて有用である。遺伝子発現を抑制する方法としては、遺伝子破壊株を利用する方法、アンチセンスRNAやコサプレッションを用いた遺伝子発現制御がこれまでに用いられてきているが、ニ本鎖RNAに依存した標的mRNAの分解(RNA干渉法;RNAi)は、近年、siRNAを利用した動物細胞における包括的ゲノム解析に見られるように極めて有力な手法である。一方、RNAiと同様の機構による遺伝子発現抑制(RNA silencing)は植物で早くから知られていた現象であり、RNAiの分子機構の理解は、応用のみならず、植物における遺伝子発現制御機構の理解においても極めて重要である。ここでは、植物におけるRNAi研究の概要を紹介するとともに、我々がオウレン細胞を用いて確立した一過的RNAi法を用いた遺伝子機能解析、特に、転写ネットワーク解析の実例を紹介する。