抄録
植物ホルモン・ブラシノステロイド(BR)の受容機構の解明研究は、BRの情報伝達が遮断された突然変異体bri1がシロイヌナズナから初めて同定されて以来、原因遺伝子の発現タンパク質BRI1を中心に行われてきた。BRI1は、1回の細胞膜貫通領域を挟んで25個のロイシンに富んだ繰り返し領域(LRR)を細胞外に、Ser/Thr型キナーぜ領域を細胞内に持ち、シロイヌナズナで大きなファミリーを形成する受容体型Ser/Thrキナーゼに属する。特徴的なのは、21番LRR(LRR21)と22番LRR(LRR22)の間に70-amino acid island領域(ID)が存在することである。この様な構造的特徴、細胞膜上の局在、その他の実験結果より、BRI1はBR受容体の最有力候補として、ここ10年に渡り、その証明研究が行われて来た。最近、我々は、BRが、他の因子の介在なしに直接BRI1に結合することを明らかにし、結合の最小領域としてID-LRR22を特定した。これによって、BRI1はBRの受容体であることが証明されただけでなく、新規なステロイド結合領域が提示された。この研究では、BR分子を化学修飾したBRプローブが、重要な役割を演じた。即ち、高放射活性のトリチウム標識ブラシノライド(50 Ci/mmol)は結合活性試験で、biotinとphenyldiazirineで二重標識したカスタステロン誘導体は光アフィニティー標識実験で威力を発揮した。本発表では、分子生物学と有機化学の連携で得られた以上の成果を、有機化学的な側面に重点を置いて紹介する。