抄録
症例は60歳,女性.早期胃癌に対する加療目的に当科に紹介された.術前のMDCTで,総肝動脈は上腸間膜動脈から分岐し,門脈の背側を走行するAdachi VI型の血管走行破格であることがわかった.Adachi VI型では,膵上縁に総肝動脈がみられないためNo.8aリンパ節郭清の際に問題となる.術前のMDCTでAdachi VI型と認識していたことから,左胃動脈より右側で膵上縁に位置するNo.8aリンパ節を郭清する際,門脈前面を露出し,この層を保ちながら左胃静脈を同定,処理することで門脈系を損傷することなく,安全にD1+βリンパ節郭清を伴う腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行できた.腹腔鏡下手術では術中に触覚で血管走行を確認できないので,術前のMDCTで血管走行破格を認識しておくことが肝要である.