抄録
ポジトロン放出核種を利用して生きた植物中の水ならびに元素動態をリアルタイムで計測する方法について紹介する。ポジトロン放出核種によるイメージング手法はPET(Positron Emission Tomography)と呼ばれ医学分野で発展してきているが、同手法を植物研究に応用するためには、種々の問題を克服する必要がある。ポジトロン放出核種は消滅する際に同一エネルギーを持つ2本のガンマ線を180度反対の向きに放出する。そこで、植物にポジトロン放出核種ならびに本核種で標識した化合物を吸収させ、植物試料に焦点を絞って両側から計測器をあてて同時計測を行うとどこにこの核種が存在するかをトレースできる。ポジトロン放出核種としては11C、18Fなど数種類の核種が利用できるが、本手法の一番の特徴はこれらほとんどの核種の半減期が数分から数時間と非常に短いことである。つまり、数時間経つと植物中の放射能は検出されなくなり、同じ試料を用いて同じ実験を繰り返すことができる。そのため、生物学で問題となりがちな再現実験を正確に行うことができる。今回は一例として14N(d, n) 15O反応により生成した15O標識水を用いた植物中の水のリアルタイム計測を挙げる。15Oの半減期は2分と極めて短いものの、独自に組み立てた計測系で植物中の定量的な水の動態を初めて調べることができたので紹介したい。