抄録
シロイヌナズナのcrumpled leaf (crl)変異体ではプラスチドの分裂が阻害され1葉肉細胞あたりの葉緑体数が平均1.5個に減少すると共に、胚発生、茎頂分裂組織の構造、葉・根・茎・花の発生分化が異常となる。我々は葉緑体分裂に関与する遺伝子の一つであるftsZ1-1とcrlとの二重突然変異体が胚発生、茎頂分裂組織の構造、葉や根の発生分化においてcrl変異体よりもさらに顕著な異常を示す事を明らかにしたので報告する。crl ftsZ1-1二重突然変異体の胚では茎頂分裂組織を含む領域が拡大し約半数の胚が3つ以上の子葉原基を持っていた。発芽した二重突然変異体は様々な形態異常を示し、crlよりもさらに矮小で細く縁がいびつで斑の入った本葉を生じる個体、棒状の突起が生じる個体、根がほとんど伸長しない個体などが観察された。また、二重突然変異体の茎頂分裂組織にはL1, L2, L3に相当する細胞の層構造が存在しなかった。クロロフィル自家蛍光を指標として成熟胚における細胞あたりの葉緑体数を測定すると野生型、crl変異体、ftsZ1-1変異体の胚にくらべて二重突然変異体の胚には葉緑体を含まない細胞が多数存在していた。葉緑体を持たない細胞が多数胚に存在する事と二重突然変異体が示した様々な形態異常との関連を議論する予定である。