抄録
ATP-binding cassette (ABC) トランスポーターのうち、Pleiotropic drug resistance (PDR) ファミリーは、多様な毒物や薬剤を排出する多剤耐性ポンプである。シロイヌナズナは15のPDR分子を持ち、我々はこのうち構成的で最も発現レベルの高いAtPDR8について解析を行った。膜分画とAtPDR8特異的抗体を用いた免疫ブロットにより、AtPDR8は細胞膜に局在していた。AtPDR8のT-DNA挿入変異株(atpdr8)は野生株に比べ顕著な細胞死が観察されたため、AtPDR8の病害抵抗性への関与を検討した。非病原性ジャガイモ疫病菌Phytophthora infestansを接種したところ、感染菌糸はatpdr8の表皮細胞壁を貫通し、細胞死を引き起こした。感染性病原菌Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000の接種ではatpdr8は著しい細胞死を起こし、その増殖は野生株の1%に抑制された。また、atpdr8は非滅菌栽培では野生株に比べ防御遺伝子PR-1, PR-2, PR-5, VPEg, AtrbohDを高発現していた。これらの結果は、AtPDR8が防御応答に密接に関わる物質を細胞外に輸送し、この物質は病害抵抗性を持つとともに、防御遺伝子の発現および細胞死を促進する物質である可能性を示唆する。