抄録
病害や傷害を受けた植物は、防御や細胞修復に関わる遺伝子を速やかに発現誘導する。これまで多くの遺伝子群が単離されたが、機能未知なものも多く、病傷害応答の分子機構には未解決な部分が少なくない。私たちは、傷害処理後のタバコから単離した機能未知遺伝子がコードするプラスチド局在型bHLHタンパク質WINB (Wound-Induced bHLH protein)の機能解析を行っている。
これまでの解析から、WINBは傷害だけではなく、TMVなどの病害にも発現応答することが明らかになっている。そこで、サリチル酸、ジャスモン酸、エチレン、H2O2への応答性を調べたところ、H2O2に明らかな応答を示した。WINBのプラスチド局在化シグナルを明らかにするために、様々な長さに切断したWINBとGFPとの融合タンパク質を用いて解析したところ、bHLHモチーフのDNA結合ドメインであるbasic領域を完全に含むN末端約70残基が局在化シグナルであった。また、酵母ツーハイブリッド解析の結果、WINBはホモダイマーを形成しなかった。以上の結果から、WINBは、ROSによって発現が誘導され、DNA結合ドメインを含むN末端を利用してプラスチドへ移行することが明らかとなった。また、他のタンパク質とヘテロダイマーとなってDNAに作用するか、あるいは転写因子とは別の機能を有している可能性が示唆された。