日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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硫黄栄養応答欠損変異体slim1の解析
*丸山 明子中村 有美子斉藤 和季高橋 秀樹
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p. 302

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抄録
硫黄は植物の生存に必須な多量元素であり、その供給量及び同化能は植物の生育や発達に大きく影響する。硫黄栄養が不足すると、植物体内では硫黄同化系で働く酵素遺伝子群の発現が上昇し、この現象により硫黄欠乏下(-S)での効率的な硫黄同化、ひいては植物の生存が可能になると考えられている。しかしながら硫黄栄養の変化から遺伝子発現変化に至る分子機構についてはほとんど知られていない。そこで本研究では硫黄栄養応答変異体の単離、解析を試みた。硫酸イオントランスポーターSULTR1;2のプロモーター制御下にGFPを発現する形質転換植物では、-SによりGFPが蓄積する。この植物にEMS処理したM2種子を用いて、-SでGFPの蓄積が起こらない変異体 slim1sulfur limitation1)を単離した。原因遺伝子SLIM1は、その配列から転写因子としての機能が示唆された。GFPをレポーターとした解析から、SLIM1は維管束で発現しており、細胞内では核に局在することが示された。また、slim1と野生株を比較したマイクロアレイ解析から、-S応答性遺伝子群のほとんどがSLIM1の制御下にあることが明らかとなった。slim1は-Sでの生育が低下する。興味深いことにSLIM1過剰発現体では-Sでの生育が上昇した。これらの結果から、SLIM1は-S応答の包括的な制御因子であり、硫黄栄養が制限要因となる場合には遺伝子発現の制御を介して成長を正に制御する因子であることが明らかとなった。
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© 2006 日本植物生理学会
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