抄録
植物の根は土壌水分環境の影響を直接的に受けるため、地上部とは異なった独自の乾燥ストレス耐性機構を有していると考えられる。そこで本研究では、乾燥ストレスに優れた耐性能を示す野生種スイカ(Citrullus lanatus sp. No101117-1)の根における乾燥ストレス応答タンパク質をプロテオーム解析により網羅的に同定し、本植物の乾燥ストレス応答機構について考察した。
強光・乾燥ストレス(700 μmol photons/m2/s,35℃,潅水停止)を付与した野生種スイカの根から、可溶性タンパク質を抽出し、二次元電気泳動により分離した。その結果、約1500個のタンパク質スポットが検出され、その中で乾燥ストレス付与1日目(初期増加型)および3日目(後期増加型)で強度が顕著に増加したスポットが、それぞれ37個、42個認められた。また、ストレスにより減少したスポットは14個検出された。LC-MS/MSによる解析の結果、初期増加型には様々な代謝関連タンパク質(29.7%)や2つのRan GTPaseを含めた細胞分裂制御/形態形成関連因子(13.5%)が、後期増加型にはヒートショックタンパク質(28.6%)、抗酸化関連タンパク質(14.3%)、プロテアーゼ(9.5%)などが含まれていた。以上の結果より、野生種スイカの根は乾燥ストレスの程度に依存してストレス回避および防御機構を機能させて誘導していることが示唆された。