抄録
強光・乾燥ストレスに対して高い耐性能を有する野生種スイカ(Citrullus lanatus sp. No101117-1)の根には、優れたストレス回避/防御機構が存在すると考えられる。我々は、野生スイカの根のプロテオーム解析の結果から、細胞分裂制御に関与するRan GTPase (CLRAN) の蓄積量が乾燥ストレス初期に増加することを明らかにした。そこで本研究では、乾燥ストレス下での野生種スイカの根の発達制御機構およびCLRANがその機構に果たす役割について検討した。
野生種スイカの根の伸長率は、通常条件下(200 μmol photons/m2/s, 35℃, 一日一回潅水)よりも乾燥ストレス条件(潅水停止)下において増加していた。また、野生種スイカは、乾燥ストレス下では栽培種スイカと比較して2倍以上アブシジン酸(ABA)を蓄積していたが、主根伸長および側根形成共にABAに対して低感受性であった。また、CLRANは主に根端の分裂および伸長領域で発現し、根端での発現量が乾燥ストレスにより約1.5倍に増加した。さらに、CLRAN過剰発現シロイヌナズナの根において、ABA感受性低下が認められた。以上の結果から、野生種スイカは乾燥ストレス回避のための根の生長促進機構を有しており、CLRANがその制御に関与することが示唆された。