抄録
近年siRNAが、クロマチンの不活化あるいはエピジェネティックな遺伝子発現抑制に関与していることが示唆されているが、これらに関する知見は十分ではない。そこで本研究では、siRNAのエピジェネティックな制御を解析するため、プロモーター配列と相同なsiRNAを高発現させた系を構築した。プロモーターsiRNAは、相同なターゲットプロモーターにDNAメチル化やヒストン修飾のエピジェネティックマーカーを誘導し、ターゲット遺伝子の発現を抑制することが予想される。
これまでに、8つの遺伝子をそれぞれターゲットにした形質転換イネを作出した。現在までの解析から、35S::GFP および内在遺伝子Se5において発現抑制が引き起こされたが、残りの6つの内在遺伝子では特に有意な発現抑制は認められなかった。そこで、発現抑制とエピジェネティックな修飾との相関を解析した。その結果、発現抑制の有無に関わらず、いずれのターゲットプロモーターにおいてもDNAメチル化は誘導されていた。しかし、ヒストンH3の脱アセチル化は、発現抑制がみられる35S::GFPのターゲットプロモーターにのみ観察された(Se5は解析中)。現在、他のヒストン修飾についても解析を行なっている。また、エピジェネティックな修飾に対する阻害剤を用いた解析も進行中であり、本年会ではこれらの結果も踏まえ、siRNAのエピジェネティックな機能を考察したい。