抄録
テトラピロール生合成系において、グルタミン酸tRNA還元酵素(HEMA)とFe-キラターゼ(FC)のアイソフォーム、HEMA2とFC1は、主に根や胚軸などの非光合成組織で主に発現しているため、これらの組織におけるヘム生合成に機能していると考えられている。我々は、光合成組織においてHEMA2、FC1の発現が蛋白質合成阻害剤であるシクロヘキシミド処理により誘導されることを見出した。従って、光合成組織におけるHEMA2、FC1の発現は通常は抑制されており、ストレスなどの条件下で誘導を受けるのではないかと考え、HEMA2あるいはFC1 のプロモーターGUS融合遺伝子を導入したシロイヌナズナにストレス処理を試みた。その結果、傷害処理した葉の傷害部位の周辺部でのGUS活性の上昇が認められた。また、オゾン曝露処理により植物体全体でのGUS活性の誘導が認められた。以上の結果より、HEMA2、FC1の発現は、傷害やオゾン処理などの酸化ストレスにより誘導されることが示された。cDNAアレイ解析により、傷害処理した葉では、HEMA2、FC1の発現が処理後15分での急速な誘導を受けることが明らかとなった。また、活性酸素消去や細胞壁合成など、防御応答に関わるヘム蛋白質が誘導されることを見出した。従って、HEMA2、FC1が酸化ストレス時の防御応答に機能している可能性が考えられ、その機能について解析中である。