日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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培地中の糖が葉の発生に及ぼす影響
*矢野 覚士塚谷 裕一
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p. 609

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抄録
植物は光環境に応じた葉、厚い陽葉(明所型)と薄い陰葉(陰所型)とを形成する。近年いくつかの植物種において、陽・陰葉の発生調節機構が解明され始めた。これらの報告に共通して言えるのは、成熟葉の光環境が新しい葉の発生に影響を与えているという事である。これは、成熟葉から葉原基への情報伝達機構の存在を示唆している。我々は、このシグナルが光合成産物の糖類である、という仮説を立て検証を行っている。各種濃度のスクロース培地(0.5、1、1.5、2、3%)で栽培したシロイヌナズナを材料とし、は種後14日目の第3葉の形態を比較したところ、培地中のスクロース濃度が増加するにつれ葉肉を構成する細胞層数が増加した。一方、柵状組織細胞の大きさは、培地中の糖濃度の増加に伴い減少する傾向が見られた。従って、葉の発生は糖の影響を受けていると考えられる。では、葉の発生途中で培地中の糖濃度が変化した場合、発生運命は変化するのだろうか?この疑問に答えるために、は種後10日目に新しい培地に移植するという実験を行った。は種時と同濃度の培地に移植した対照植物では、移植による効果はなかった。異なる糖濃度の培地に移植した植物では、低濃度側へ移した場合はほとんど影響が見られなかったが、高濃度側へ移した場合には若干の細胞層数増加が見られた。よって移植時点の葉には可塑性があると考えられる。発表では、は種後8、12日目に移植した結果も併せて報告する。
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© 2006 日本植物生理学会
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