抄録
我々は、シロイヌナズナにおいて、FT遺伝子過剰発現体の花成早化表現型を昂進する優性変異体crp-1D(cryptic precocious)を単離した。ポジショナルクローニングにより原因遺伝子を同定したところ、この遺伝子は、転写メディエーター複合体のサブユニットMed230に低い相同性をもつ2235アミノ酸のタンパク質をコードしていた。Daphne(2002)らにより、転写メディエーター複合体の別のサブユニットMed150と相同性がある遺伝子が欠損した植物体において形態異常が報告されている。CRP遺伝子は花成を含め、発生過程において様々な遺伝子の発現制御に関わる可能性が考えられる。そこで、CRP遺伝子の発生過程における役割について調べるため、DsトランスポゾンおよびT-DNAの挿入による機能欠損変異体crp-2、crp-3、crp-4を取得し、crp-1Dとともにその表現型の観察を行った。花成時期を測定したところ、crp-1Dは花成早化表現型を示したのに対し、CRP遺伝子機能欠損変異体は花成遅延表現型を示した。このことから、CRP遺伝子は花成の調節において何らかの役割を果していると考えられる。さらに、CRP遺伝子機能欠損変異体は、ロゼット葉や花器官においても形態異常、矮性、不稔など多面的な形態異常を示すことがわかった。現在、CRP遺伝子の発現パターンの解析、機能欠損変異体の表現型の解析を行っている。