日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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低温で速やかに発芽するシロイヌナズナ突然変異体の選抜と解析
上野 有紀田中 紗季子藤 茂雄レピニエク ロイック*川上 直人
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p. 042

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抄録

シロイヌナズナの種子において、可視的な発芽が認められるまでの時間は吸水温度の低下とともに長くなる。低温による発芽遅延に関わる遺伝因子を見出すことを目的として、10,000のT-DNA挿入系統を選抜し、5℃で野生型よりも速やかに発芽する突然変異を4系統単離した。このうち、最も顕著な表現型を示したLTW18-1の種子は、野生型種子の発芽が完全に抑制される34℃でも50%程度の高い発芽率を示した。また、発芽においてABA低感受性を示すとともに、GA合成阻害剤であるパクロブトラゾールに耐性を示した。さらに、葉の葉縁の切れ込みが野生型よりも深く、草丈がやや小さいなどの形態的な変異も認められた。これらの形態的な特徴とABA低感受性発芽形質はオーキシン耐性変異の一つであるibr5に類似していたため、遺伝的相補性検定を行ったところLTW18-1はibr5の新たな対立遺伝子であることが示された。LTW18-1のIBR5遺伝子領域の塩基配列を決定したところ、第2エクソンに7塩基の欠失を持ち、終止コドンを生じることが明らかになった。これらの結果は、IBR5は低温から高温に至る広い温度条件において、ABAが関与する発芽調節に重要な働きを持つことを示唆している。

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© 2007 日本植物生理学会
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