抄録
篩部組織は、糖の転流やシグナル分子の運搬など植物の成長に重要な機能を果たしているが、その形成や機能の維持に関与する分子機構は今のところほとんど明らかになっていない。我々はこれまでヒャクニチソウの HD-Zip 遺伝子 ZeHB3 が未成熟な篩部に特異的に発現することを見出してきた。ZeHB3 およびそのシロイヌナズナ相同遺伝子 AtHB5 をシロイヌナズナで過剰発現させると根冠に蓄積するアミロプラストが消失し、実生致死の表現型を示した。このとき、篩部のマーカーである SUC2::GUS の異所的な過剰発現が観察された。しかし、他の篩部マーカーであるAHA3::GUS や APL::GUSの過剰発現は観察されず、篩部の形成パターンは正常であると考えられた。SUC2 は、植物体内でのスクロース輸送に重要なスクローストランスポーターである。このことから、 ZeHB3 や AtHB5 が篩部機能の維持に寄与する因子である可能性が考えられる。現在、ZeHB3 および AtHB5 の過剰発現植物を用いたマイクロアレイ解析とEMS処理によるサプレッサースクリーニングを行っており、その結果についても合わせて報告する予定である。