抄録
転写後遺伝子発現制御に関与するsmall RNAには、発生段階や環境変化により発現量が変化するものが知られている。これらは様々な状況で特異的に発現し、標的遺伝子を負に制御することで発生の制御、病害抵抗性の獲得などに寄与する。ウイルスが感染した植物においてもsmall RNAの発現が変化し、それによって標的遺伝子が制御される可能性が考えられるがいまだ明らかではない。
そこで我々は、+鎖RNAゲノムを持つタバコモザイクウイルスを感染させたシロイヌナズナおよび非感染のシロイヌナズナの葉からsmall RNAをクローニング・配列決定を行い、ウイルス感染によるsmall RNAの発現量及び種類に対する影響を調べた。
ウイルス感染体では、約80%が植物ゲノムに由来し、約10%がウイルスゲノムに由来する配列が得られた。ウイルス由来の配列は+鎖と-鎖両方に由来していた。そしてウイルス感染体では非感染体に比べて、多種類のmicroRNAが増加することが明らかとなった。さらに興味深いことに、ウイルス感染植物にのみ特異的に見られる新規small RNAを得ることができた。これは植物の耐病性に関与しているのかもしれない。さらに本研究により、シロイヌナズナにおいてもウイルス感染植物を用いることによって、まだ発見されていないsmall RNAを見出す可能性があることが示唆された。