抄録
我々はイネ完全長cDNA約13,000種類を個々に発現するシロイヌナズナ形質転換系統(イネFOXライン)を用いて有用形質を示す変異体の選抜をすることで、イネ有用遺伝子の探索を行っている。植物へのUV-B照射は様々な要因による生育阻害を引き起こす。その解決には遺伝子発現増強によるUV-B耐性の付与がひとつの手段であると考えられる。そのため本研究ではイネFOXラインからのUV-B耐性変異体のスクリーニングを進めている。今回はそのスクリーニング結果について報告する。
スクリーニングはroot bending assayにより行なった。UV-B照射下で、野生型と比べ根の成長抑制が少なかった系統をUV-B耐性変異体候補として選抜した。現在までに約3,900系統のT2種子を用いたスクリーニングが終了しており、その中から50系統の候補を単離し各々のイネFOXラインに含まれるcDNAを同定した。同定されたcDNAには転写因子、細胞周期制御、ストレス応答等に関連することが予想されるもののほか、機能未知なものも多く含まれていた。単離された変異体の中には、UV-Bの有無に関わらず根の成長が促進される変異体も含まれていることが予想される。そのため現在単離された変異体の詳細な分類を試みている。本研究は、平成18年度科学振興調整費「イネ完全長cDNAによる有用形質高速探索」によって行なわれている研究である。