抄録
イネはアルミニウム耐性種として知られているが、その耐性機構も耐性遺伝子もまだ明らかにされていない。我々はイネのアルミニウム感受性突然変異体als1を単離し、その原因遺伝子をクローニングした。この遺伝子を突然変異体に形質転換したところ、アルミニウム耐性が回復された。Als1の発現解析を行った結果、この遺伝子は地上部ではなく、主に根において発現していた。またAls1の発現はアルミニウムによって誘導され、根端(0-1cm)と基部(1-3cm)とも発現が認められた。Als1の発現を経時的に調べた結果、アルミニウム処理後2時間で発現誘導が見られた。Als1のプロモーターにAls1とGFPを連結したコンストラクトで形質転換したイネを用いて、Als1の細胞及び組織局在性を調べた。Als1は根端では、すべての細胞の細胞膜に局在し、基部側では表皮以外の細胞の細胞膜に局在していた。また側根においても蛍光が観察された。抗体染色も同じ結果を示した。Morinで根端を染色し、細胞内のアルミニウムを経時的に観察した。その結果、短時間のアルミニウム処理で野生型のイネではほとんど蛍光が観察されなかったが、変異体ではすべての細胞に強い蛍光が観察された。これらの結果はAls1が細胞に侵入したアルミニウムを細胞外に排出することに関与している可能性を示唆している。現在、この遺伝子の機能について更なる解析を行っている。