日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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内生オーキシンの蓄積はヒメツリガネゴケのリプログラミング過程に必須である
*篠原 直貴平井 正良木村 美奈長谷部 光泰佐藤 良勝
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p. 164

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抄録
成熟した体細胞から幹細胞への分化転換の分子基盤は、動物・植物いずれの研究分野においても、十分に解析されていない。ヒメツリガネゴケは、幹細胞への分化転換を解析する上で、よいモデル生物になると考えられる。
ヒメツリガネゴケは、通常の発生過程では、胞子が発芽して、幹細胞の一種である原糸体頂端細胞を形成し、その後、この細胞は、性質をかえて、茎・葉構造を有する茎葉体を形成する。一方、切断した葉では、傷に面した細胞が原糸体頂端細胞へと分化転換する。この過程は、分化した葉の細胞から幹細胞の機能を有した原糸体頂端細胞への分化転換という点で、リプログラミング過程とみなすことができる。私たちは、まず、この分化転換を高頻度かつ同調的に誘導できる実験系を確立した。続いて、この実験系を用いて植物ホルモンの分化転換過程への関与を解析した。その結果、オーキシン、アブシシン酸の過剰投与は、原糸体への分化転換を遅らせるが、サイトカイニン、ジベレリン、ブラシノステロイドは何の影響も示さないことが分かった。さらに、アンチオーキシンは分化転換を顕著に抑制し、その抑制効果は、オーキシンの投与によって特異的に回復することが分かった。このことは、リプログラミング過程で適正な濃度の内生オーキシンの蓄積が必要であることを示している。
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© 2007 日本植物生理学会
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