日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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遺伝子破壊によるヒメツリガネゴケABI1相同遺伝子の機能解析
*西川 友梨小松 憲治太治 輝昭田中 重雄坂田 洋一
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p. 167

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抄録
2C型脱リン酸化酵素(PP2C)をコードするABI1は、シロイヌナズナにおけるアブシジン酸(ABA) シグナル伝達系の負の制御因子として機能する。我々は、進化的にシロイヌナズナと大きく離れたコケ植物ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)においても、PP2Cを介したABAシグナル伝達制御機構が存在していることを示し、ABI1と高い相同性をもつヒメツリガネゴケ遺伝子PpABI1を同定した。PpABI1はヒメツリガネゴケを用いた一過的発現系から、ABAシグナル伝達系の負の制御因子として機能することが示唆された。本研究では、PpABI1のin vivoにおける機能を明らかにするために、相同組換えによるPpABI1遺伝子の破壊株(PpABI1 KO)を作出し、解析を行った。ABA処理がヒメツリガネゴケ原糸体の凍結耐性を濃度依存的に増すことから、PpABI1 KOの凍結耐性を試験したところ、0.1µM ABA処理において野生型株の約2倍高い生存率を示した。また、桿状の原子体細胞はABA処理によりbrood cellと呼ばれる球形細胞へと分化するが、PpABI1 KOは野生型株と比べてより低濃度のABAでbrood cell化した。PpABI1 KOがABA高感受性となることから、PpABI1がヒメツリガネゴケABAシグナル伝達系の負の制御因子であることが明らかとなった。
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© 2007 日本植物生理学会
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