日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ヒメツリガネゴケにおけるABI3/VP1 相同遺伝子PpABI3の機能解析
*竹中 章人岡 聖奈子太治 輝昭田中 重雄坂田 洋一
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p. 168

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抄録
アブシジン酸 (ABA) は種子成熟とそれに続く乾燥耐性と休眠性の獲得に深く関与している。そしてそのシグナル伝達の重要な因子として転写調節因子のABI3/VP1が知られている。我々はコケ植物ヒメツリガネゴケ (Physcomitrella patens) において3種のABI3/VP1相同遺伝子 (PpABI3APpABI3BPpABI3C) の存在を明らかにし、さらにPpABI3Aが高等植物ABI3/VP1の機能を部分的に相補することを報告した。しかしながら種子を持たないヒメツリガネゴケにおけるPpABI3の機能は未だ明らかではない。PpABI3の機能解析を目的に定量的RT-PCRによる発現解析を行ったところ、3種のPpABI3 はともにヒメツリガネゴケの原糸体、茎葉体、胞子嚢において発現がみられ、これは主に種子でしか発現がみられない高等植物ABI3/VP1とは大きく異なっており、PpABI3の生活環を通じた機能が示唆された。PpABI3A過剰発現株では、ヒメツリガネゴケのABAおよびストレス応答性遺伝子であるPpLEA1の発現が、ABA濃度依存的に野生株よりも増加することが明らかとなった。またヒメツリガネゴケではABA添加による生長抑制が知られているが、過剰発現株では野生株に比べて抑制効果がより低濃度のABA添加でもみられた。一方、PpABI3三重欠損株ではABAによる生長抑制はほとんど観察されなかった。以上のことからPpABI3はヒメツリガネゴケにおけるABAシグナル伝達の正の調節因子として機能し、細胞生長を制御していることが示唆された。
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© 2007 日本植物生理学会
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