抄録
2005年度大会で、ノックアウトイネ集団から単離したSSIIIa変異体について報告した。本大会ではこの変異体のイネ胚乳に蓄積されるデンプンの成分、構造を詳細に解析し、SSIIIaの機能および他の酵素への影響を明らかにした。SSIIIa変異体のイソアミラーゼ、プルラナーゼ、枝作り酵素BEIIa, BEIIb、ホスホリラーゼの活性は、野生型と比べて変化はなかったが、BEI活性がやや強くなっていた。これに対して、SSI活性は、顕著に増加しており、タンパク質レベルで野生型の1.3-1.7倍であった。また、GBSSIタンパク質の量も1.4-1.7倍に増加していることが明らかになった。SSI活性の増加は、アミロペクチンのグルコース重合度(DP)≤20の鎖長に影響を与え、DP10-15の増加が顕著に見られた。また、GBSSIの増加は、真のアミロース含量およびアミロペクチンの超長鎖(DP≥500)をそれぞれ1.3倍および12倍に増加させた。SSIIIa変異体の胚乳デンプンは、粘度が劇的に低下するなど、物性の劇的な変化が見られたが、これは、SSIIIa欠失の直接的なアミロペクチン長鎖(DP≥33)の減少に加え、他のSSアイソザイムへの影響による間接的な要因に起因すると考えられた。