日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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FT-ICR MS メタボロミクスによる桂皮酸モノリグノール経路の多段階酵素反応の同時解析
*甲斐 光輔辰巳 舞柴田 大輔金谷 重彦太田 大策
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p. 208

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抄録
桂皮酸モノリグノール経路は、リグニンなど多様なフェニルプロパノイドの生合成に関与する、植物の主要な代謝経路の一つである。本経路は、碁盤の目状に経路を形成しており、各段階に関与する生合成酵素には複数のアイソザイムが存在し、その基質化合物も単一ではない。このように複雑な経路において、推定基質を用いた個々の酵素活性の個別解析は生理的代謝フラックスの評価を誤った方向に導く可能性もある.
FT-ICR MS (フーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分離装置) は高い感度と分解能を有する質量分離装置であり,混合物溶液を直接分析装置に導入することにより同時に多数の化合物が分離・分析できる。さらに、検出されるそれぞれのイオンの精密質量から、組成式を推測することができる。これらの特性から、FT-ICR MS を用いて複数の酵素と酵素基質を用いた一連の生合成反応の網羅的高速解析が可能であると考えられる。
本研究では、桂皮酸モノリグノール経路の 4CL (4-coumarate:CoA ligase) および HCT (hydroxycinnamoyl CoA:shikimate/quinate hydroxycinnamoyltransferase) の組み換え酵素を調製し、複数の桂皮酸類を基質に用いて連続した酵素反応を同時に行い、FT-ICR MS 一斉分析によって HCT の生成物を検出した。本発表では、複数の酵素反応解析における FT-ICR MS を用いたメタボロミクスの有用性を議論する。
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© 2007 日本植物生理学会
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