抄録
海洋性珪藻Phaeodactylum tricornutum の細胞内carbonic anhydrase(PtCA1)は、CO2の濃縮(CCM)及び固定に重要な鍵酵素の一つであると考えられている。PtCA1はガードルラメラ上に顆粒状に局在することが明らかにされているが、顆粒を形成する仕組み、及び顆粒を形成することの生理的意義は明らかにされていない。本研究では、PtCA1の顆粒の形成機構を明らかにすることを目的としている。成熟PtCA1のN末端あるいはC末端をそれぞれ部分的にトランケートした改変PtCA1-GFP融合タンパク質を発現する形質転換体を作製し、GFP蛍光の細胞内局在を観察した結果、PtCA1のC末端側から数えて1 ~20アミノ酸の領域に顆粒形成に関わる配列があることが示唆された。また、この領域を含む疎水性クラスター分析を行った結果、この領域内に3 残基毎に繰り返し存在する疎水性アミノ酸 M, L, I, L, L がC末端のαヘリックス上に一列に並ぶことで、疎水性クラスターが形成されると推定された。そこで、これら疎水性アミノ酸をそれぞれ側鎖のサイズが似かよった親水性アミノ酸に置換した改変PtCA1-GFP融合タンパク質を発現する形質転換体を作製し、GFP蛍光の観察を行った。その結果、この疎水性クラスターが、PtCA1の顆粒形成に必須であることが示された。