抄録
溶液中とLH1, LH2, RC, RC-LH1複合体に結合した共役二重結合数n = 9–13の範囲のカロテノイド(Car)の三重項状態の吸収スペクトルを測定して、三重項寿命(τ)のn依存性を調べた。Englman・Jortnerのエネルギー・ギャップ則から導かれるln τと1/(2n + 1)との直線関係の変化を次のように説明した。(1) 溶液 → LH2に伴う直線関係の短寿命方向へのシフトは、カロテノイド共役鎖の捩れに由来する。(2) LH1 → RC-LH1に伴う直線関係の傾きの減少は、微小成分として混在する長鎖カロテノイドが、三重項エネルギー散逸のチャンネルを形成するためである。(3) RC → RC-LH1に伴う水平な直線関係への変化(共役鎖長依存性の消滅)は、RCのバクテリオクロロフィルが、三重項エネルギー貯蔵庫(triplet reservoir)としての機能を発揮するためと考えられる。