日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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紅色光合成細菌Rhodovulum sulfidophilumにおいて光化学反応中心への電子供与体として働く膜結合性チトクロムcの遺伝子破壊を通じた生理的役割の解明
木村 泰明Alric JeanVermeglio Andre増田 真二萩原 友樹松浦 克美嶋田 敬三*永島 賢治
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p. 227

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抄録
Rhodovulum sufidophilumは海洋性の紅色光合成細菌であり、光化学反応中心複合体に結合している通常4ヘム型のチトクロムサブユニットが3ヘム型であるという特徴を持つ。この反応中心への電子供与体として他の紅色光合成細菌にも広く見られる水溶性のチトクロムc2が確認されているが、これまでの研究でチトクロムc2だけでなく膜結合性のチトクロムcもまた電子供与体として働くことを示唆してきた。本研究ではこの膜結合性チトクロムcをコードする遺伝子のクローニングと破壊を通じてその生理的役割を明らかにすることを目標とした。クローン化された遺伝子の配列解析から、このチトクロムはN末端に膜貫通領域を持つ分子量50,528のモノヘムチトクロムcであることが解った。また、ヘムの結合部位がC末端領域にありチトクロムc2とアミノ酸レベルで54%の高い相同性を示したことから比較的最近起こった遺伝子重複に起源を持つ可能性が示された。我々は以前の研究でチトクロムc2遺伝子を破壊しても光合成による生育は野生型と変わらないことを示している。本研究で膜結合性チトクロムc遺伝子を破壊した株を作製したところ、やはり生育は野生型とほぼ同様であった。しかしこれらチトクロムの2重破壊株を作製したところ、光合成による生育は不可となった。このことからR. sulfidophilumにおいては両者とも反応中心への生理的電子供与体として等価に働くことが示された。
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© 2007 日本植物生理学会
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