抄録
細胞壁中のキシログルカン分子鎖のつなぎ換えを行うキシログルカンエンドトランスグルコシラーゼ(XET)は、ドナーとアクセプターの2つの基質を用いて転移反応を触媒する。エンドウ上胚軸から精製したXETアイソザイムを用いて酵素反応速度論的に二基質反応機構を解析したところ、酵素・ドナー・アクセプター複合体を形成するシークエンシャル機構で働くことが示された。このことから、細胞壁中でXETはキシログルカン分子の中に結合した「酵素・ドナー複合体」と、キシログルカン分子の非還元末端に結合した「酵素・アクセプター複合体」の状態で存在していると考えられる。アクセプターとして蛍光標識したキシログルカンフラグメントオリゴサッカライド(XXXG、1 kDa)をエンドウ茎切片に与えたところ、第3節間において表皮組織に取り込みが見られた。また、ドナーとして蛍光標識した高分子キシログルカン(50 kDa)を与えたところ、第1節間および第2節間の維管束に強い取り込みが見られた。このことから、XETにおいて、アクセプターを取り込む「酵素・ドナー複合体」と、ドナーを取り込む「酵素・アクセプター複合体」が異なった局在性を示すことが認められた。