抄録
水センシング機構の解明を目的として、我々は水屈性に異常を示す変異体のスクリーニングを行い、単離した変異体の一つであるcs2448の詳細な解析を行ってきた。これまでに、K+チャネルをコードしているAKT2遺伝子が水屈性異常の原因遺伝子であり、さらにその発現量が水屈性を示す部位である根端で、乾燥ストレスに応答して上昇することを明らかにした。本研究では、AKT2変異体の屈性特性とAKT2遺伝子の役割を検討したので報告する。
屈曲速度が測定できるように改良した水屈性検定法を用いて、幼植物体の根の水屈性を経時的に観察した。野生株は6時間後にほぼ最大屈性を示したが、cs2448やSALK研究所から供与されたakt2変異体は野生株より2時間以上遅れて屈曲し、遅延型の応答性を示す変異体であることが判明した。また、根におけるAKT2遺伝子の発現に植物ホルモンが関与しているかどうかをqRT-PCR法で調べたところ、アブシジン酸(ABA)によって誘導されることが明らかになった。ABA合成阻害剤やABA変異体を用いた実験から、水分感知から屈曲までのシグナル経路にABAが関与することが示唆された。
現在、根の伸長帯付近におけるAKT2遺伝子の発現変化を、AKT2プロモーターGUS植物を用いて調査し、水屈性に対する役割を調べている。