抄録
植物の細胞壁は細胞の物理的強度と構造を維持する小器官であるとともに,細胞機能の制御に重要な役割を果たしている.細胞壁構成成分のほとんどは炭水化物であるが,タンパク質もまた3次元的な物理的構造を形成する重要な役割を担っている可能性がある.そこで,ブラックマッペ(Vigna mungo L.)下胚軸細胞壁より,物性に関わるタンパク質の同定を目指した.ブラックマッペを,暗黒下,3あるいは7日間栽培した下胚軸を用い,3M LiCl (pH 6.8)で細胞壁結合タンパク質を抽出し,二次元電気泳動で分離した.主要なスポットを切り出し,N末端アミノ酸を解析し,10塩基解読した.BLAST解析より,細胞壁タンパク質,XTHやブラシノステロイド誘導性タンパク質と相同性が高いタンパク質などが得られた.この中で,機能不明のタンパク質(P1,P5)の解析を試みた.N末端アミノ酸配列をもとにプライマーを設計し,PCRを行い,タンパク質をコードする遺伝子のクローニングを行った.その結果,P1はアルファルファのunknown proteinと,P5はタルウマゴヤシcurculin-like (mannose-binding) lectinと高い相同性が示された.現在,これらタンパク質の機能解析と発現を調べている.