抄録
われわれはすでに鉄硫黄クラスタを結合したレドクスセンサーSufRによるsuf遺伝子群の調節について報告している。一方、大腸菌ではsuf遺伝子群の調節は別の鉄硫黄クラスタ結合転写因子IscRによって調節されている。シアノバクテリアではこのiscRのホモログが広く分布しているが、保存されたシステイン残基はすべて存在しない。本研究ではSynechocystisでのiscRホモログslr0846の破壊株を作製しDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、psaABの転写量が野生株の25%程度にまで低下していることが明らかとなった。また、Δslr0846株ではクロロフィル量の減少、低温蛍光スペクトル測定からPSI/PSII比の低下が確認された。この株は野生株よりも生育の速度が遅く、顕著な強光感受性を示した。このことはSlr0846が光化学系I転写調節に関与することを示唆している。さらに、Slr0846とpsaABプロモータ領域の直接的な結合を検証するため、大腸菌で発現させたHis-tag融合タンパク質を用いてゲルシフトアッセイを行っている。また、Δslr0846株は復帰変異が起こりやすく、既に複数クローンの復帰変異体が得られている。そこで、これらのpsaABプロモータ領域及びその関連遺伝子にどのような変異が起きているのかも現在解析中である。