日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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強光乾燥ストレス下における野生スイカチラコイド膜の脱共役
*上妻 馨梨明石 欣也宗景(中島) ゆり久堀 徹横田 明穂
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p. 449

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抄録
植物は多くの外的環境下において必要以上の光エネルギーを受け取るため、チラコイド膜の光化学系と、その電子伝達によりチラコイド膜に形成される電気化学的ポテンシャルの制御は非常に重要である。特に、強光乾燥ストレス下の植物葉では気孔閉鎖に伴いCO2固定反応が停止するが、このときチラコイド膜のエネルギーレベルがどのように制御されているのかについては知見が少ない。我々は、乾燥強光ストレス下の野生スイカにおいて、葉緑体ATP合成酵素εサブユニット蓄積量が選択的に減少することを見出した。εサブユニットはチラコイド膜からのプロトン流出とATP合成を共役させる重要な因子であり、その減少はチラコイド膜からのプロトン漏出を促進すると予想された。実際、クロロフィル蛍光解析においてストレスを与えた葉における作用光消去後のNPQの解消速度は非ストレス葉と比較して2倍に増加した。次に光照射下の単離チラコイド膜におけるΔpH形成能をアミノアクリジンによって測定した。その結果、ストレス条件下のチラコイド膜のΔpHはストレス前と比較して低下した。さらに、ストレス葉から調製した単離チラコイド膜にεサブユニットを添加したところ、ΔpH形成能の顕著な回復が見られた。これらの結果は、チラコイド膜ルーメンからストロマへのプロトン流出促進に、εサブユニットの選択的分解が直接的に関与していることを示す。
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© 2007 日本植物生理学会
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