抄録
植物の生育は乾燥や高塩や低温のような環境ストレスの影響を受ける。シスエレメントDRE/CRTはこれらの環境ストレス応答における遺伝子発現制御に関わっている。シロイヌナズナのDREB/CBFはこのDRE/CRTに結合し、多くのストレス応答性遺伝子の発現を制御している。このDREBホモログ遺伝子としてイネのOsDREBを単離した。OsDREB1A, 1B遺伝子は低温誘導性遺伝子で、これらの遺伝子を過剰発現したイネは多くのストレス誘導性遺伝子の発現を誘導し、乾燥・高塩・低温ストレス耐性が向上することを報告した。
今回我々は10個のDREB1/CBFファミリーの遺伝子をイネで同定した。この内6つの遺伝子は低温ストレス誘導性を示したが、他の4つは異なった発現を示した。OsDREB1遺伝子の転写活性化能をシロイヌナズナとイネのプロトプラストを用いた一過的発現系の実験で調べた。GAL4のDNA結合ドメインをOsDREB1に融合させた実験系では9つのOsDREB1が転写活性化能を持つことを確認した。一方、DREB1Aの標的遺伝子であるrd29AのDRE配列をリポーターと結合して用いた実験系では、7つのOsDREB1で転写活性化が確認された。これらの結果は、10個のOsDREB1はDNA結合ドメインの構造は類似しているが、機能に違いがあることを示唆している。