抄録
OsMPK6(昨年度はOsMPK2として発表)はエリシターにより急速に活性化され、イネの病原体認識に重要な役割を持つと考えられる。また、トランスポゾンTos17の挿入変異体(osmpk6変異体)では恒常的にPR10aの発現上昇が見られ、エリシター誘導性の他の防御関連遺伝子も多くが野生型と同程度かそれ以上に発現していた。そのため、OsMPK6は防御関連遺伝子の負の制御因子と考えられた(2006年度本大会報告)。OsMPK6によるPR10a発現上昇の要因を解析するため、OsMPK6遺伝子を導入した相補体とosmpk6変異体を比較したところ、osmpk6変異体におけるOsMPK3様キナーゼの恒常的な活性化と発現上昇が見出された。このことから、OsMPK6はOsMPK3の活性と発現の両方を抑制していると推測された。一方、MPKが制御する防御応答反応を解析するため、MAPKKであるOsMKK4遺伝子を誘導的に発現する形質転換植物を作製した。恒常的活性型OsMKK4の蓄積に伴いOsMPK6とOsMPK3様のキナーゼが活性化された。また、防御関連遺伝子の発現が上昇し、細胞死が誘導された。このことからOsMKK4はOsMPK3, OsMPK6へのリン酸化シグナルカスケードを担い、防御関連遺伝子発現、細胞死に至る一連の防御反応を制御していると考えられる。